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大阪地方裁判所 昭和28年(ワ)5177号・昭29年(ワ)5104号 判決

原告 河藤敬三 外一名

被告 錦城陸運株式会社

当事者参加人 夏井武 外二〇名

一、主  文

被告会社の株主総会が為した別紙目録<省略>記載の決議は夫々無効であることを確認する。

当事者参加人等の参加申立を却下する。

訴訟費用中原被告間に生じたものは、被告の負担とし、参加に因つて生じたものは、当事者参加人等の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨及び訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、其の請求の原因及び当事者参加人等に対する答弁として、「被告会社は、一般貸切旅客運送事業を目的とし、資本金二五〇万円一株の金額金五〇〇円発行済株式総数五、〇〇〇株設立登記昭和二六年七月三〇日を以つて設立せられ、当初の商号は、大阪陸運交通株式会社と称し、設立当初の重役は、次のとおりである。即ち、代表取締役高橋久喜代、同道田幸太郎取締役内海金蔵、同道田正吉、同中山善一郎、同河藤敬三、監査役石川正吉、同吉田広持である。原告両名は、被告会社の設立当初からの株主であり、原告河藤は、一〇〇株、原告上島は、八〇株の株主として、現在株主名簿に登載されて居る。しかるに、同年六月一三日附で被告会社の重役は、次のとおり登記簿上変更されて居る。即ち、重任取締役道田幸太郎、代表取締役並びに取締役夏井武、取締役夏井久雄、監査役松木熊吉、同監査役三井実と変更された旨記載されて居り、その前提とする株主総会は、同年六月五日被告会社に於いて開かれたと称し、後で判明したことであるが、その議事録によると、「昭和二八年六月五日午後三時本社本店に於いて株主総会を開く、株主総数三六名、発行済株式総数五、〇〇〇株、出席株主三六名(委任状共)持株数五、〇〇〇株、取締役道田幸太郎氏議長席につき議事に入る、議事、一、取締役二名、監査役二名選任の件、議長右の件につき議場に諮つた処全員一致を以つて左の通り選任し、被選任者は、何れも即時就任を承諾した。取締役夏井武、同夏井久雄、監査役松木熊吉、同三井実。議長は、右により本日の議案は、全部終了した旨告げ閉会した。時に午後四時一〇分であつた。」しかし、実際は、右の如き株主総会は、右場所で招集されたことがなく、一名の株主も集つたことなく、従つて、右の如き決議が為されたことなく、又総会招集前に株主総会を開催する旨の取締役会も開かれていないのである。そして、右議事録と称するものは、同日夜八時頃訴外森本正雄弁護士の家に於いて、同弁護士が、夏井武の為に勝手に作成し、他の契約書等作成の為に道田幸太郎から預つていた印鑑を自由に押捺して作成されたとのことであり、この偽作された議事録に基き前記の如く変更登記が為された模様である。右の次第であるから前記株主総会の決議は当初から当然存在せず無効のものである。次に昭和二八年六月一五日にも前同様不存在の株主総会に於いて前同様の決議を以つて、元大阪陸運交通株式会社と称する商号を錦城陸運株式会社と変更した決議も亦前同様無効のものである。次いで、同年一一月二日午後五時被告会社の代表取締役と称する夏井武による株主総会の招集によつて大阪市西区川口所在中華料理亭鴻盛園で次のような決議がなされた。第一号議案、前記六月五日附株主総会の決議並びに商号錦城陸運株式会社と変更した決議。第二号議案決算承認の件。第三号議案、取締役道田幸太郎、監査役三井実解任並びに取締役和田武春選任の件。右各議案につき出席株主中道田幸太郎及び原告等の異議があり、且つ、他一名の棄権があつたに拘らず多数決と称して原案どおり可決された。しかし、右株主総会は、実質上何等招集権限のない代表取締役と称する夏井武によつて招集されたものであるばかりでなく、従来の三六名の株主の殆んどが招集されず、旧株主中で招集されたのは、道田幸太郎と原告等のみであり、右新代表者によつて権限なくして発行された新株式五、〇〇〇株を各割当てた新株主によつて決議されたものであるから、右決議は、当然無効である。前記決議によつて選任されたと称する右代表者等が、爾来横暴極る行動を為し、被告会社の旧従業員全員を馘首し、その他会社の営業権の一部又は全部を他に譲渡する等自己の利益中心の行動を為している。そこで、原告等は、被告会社の各株主として、前記各株主として、前記株主総会の決議無効の確認を求める。」と陳述し、参加人等の主張中原告の主張に反するものは之を否認すると述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は、原告の負担とする、参加人の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、「原告の主張事実中、被告会社が、設立当初一般貸切旅客運送事業を営業目的とし、資本金二五〇万円、一株の金額金五〇〇円、発行済株式総数五、〇〇〇株設立登記昭和二六年七月三〇日設立当初の商号大阪陸運交通株式会社と称していたこと、設立当初の重役が、原告の主張のとおりであつたこと、昭和二八年六月一三日附で、右重役が、原告主張のとおり登記簿上変更されていること、右登記事項である重役の退任及び重任並びに就任が、昭和二八年六月五日為された旨の登記のあること、同月一五日商号を錦城陸運株式会社と変更した旨の登記が同月一七日為されていること、同年一一月二日取締役道田幸太郎及び監査役三井実を解任し、同日取締役和田武春が就任した旨の登記が、同年同月六日附で為されていることは、何れも之を認めるが、其の余は、職務代行者としては、調査資料なく、事実不明につき、何れも之を否認する。」と陳述した。<立証省略>

当事者参加人等訴訟代理人は、原告等が、被告会社の株主でないこと及び別紙目録記載の株主総会決議を無効とするとの裁判を求める権利がないことを確認する、参加による訴訟費用は原告及び被告の負担とするとの判決を求め、其の請求の原因及び参加の理由として、「参加人夏井武は、昭和二八年五月下旬頃被告会社が、経営困難に陥つた為、売りに出ていることを聞き、この会社を譲受けて事業を経営したいと思い、当時被告会社の代表取締役であつた訴外道田幸太郎と会談したところ、道田は、夏井に対し会社の譲渡については全株主より自分に一任されて居り各株主の株券及び株式譲渡証書、総会代理委任状等も全部自分が所持しているので何時でも会社の全株式を譲渡し株主総会を招集して夏井及び其の希望する者を役員に選任して会社及び其の経営を引継ぐことができる、現在役員は自分の責任で全部退任させるとのこと言明した。そこで、交渉の結果会社の全財産(営業権を含めて)を金三〇〇万円と評価し、之を会社の発行済株式五、〇〇〇株の譲渡代金として会社を夏井に譲渡し、契約成立と同時に譲受人夏井側に於いて会社を経営すること、譲渡代金及び株式は分割受渡することとし、株式名義の書換をする迄の間右譲渡の目的に副つて役員の選任、商号の変更等をする為株式名義人全員の権利は譲受人夏井に於いて代理行使すること等を約定した。そして、夏井は、同年六月五日代金及び株式の受渡方法について、代金の内金五〇万円を即時に、内金一〇〇万円を同月二五日に、残金一五〇万円を同年八月から昭和二九年五月迄毎月一五日限り金一五万円宛支払うこと、道田は、六月二五日期限の金一〇〇万円と引換に株式二、〇〇〇株を、残金一五〇万円の完済と同時に残三、〇〇〇株を、各株券に譲渡証書を添えて引渡すこと、但し夏井は何時でも右代金三〇〇万円を支払い株式五、〇〇〇株全部の引渡を求めることができる旨を約定し、かねて人選したとおり取締役に夏井武、道田幸太郎及び夏井久雄を、監査役に松木熊吉、三井実を選任し、代表取締役に夏井武を選任すること、道田は、代表取締役として右取締役、監査役の選任の為に同日午後三時被告会社本店に株主総会を招集する旨を定めた覚書を相互に取交して、夏井は、即日譲渡代金五〇万円を支払い、右覚書に定めたとおり株主総会を開いて取締役、監査役の選任決議を為し、続いて取締役全員の同意により招集手続を省略して、代表取締役選任の為取締役会を開き、夏井武を代表取締役に選任したのである。従つて、右決議は勿論適法有効である。参加人夏井武は、該契約に基き、同年六月二五日迄に代金一五〇万円を支払つたが、道田は、約旨に反して株式二、〇〇〇株の引渡をせず、八月一五日を期限とする分割代金を提供しても、その受領を拒んだのみか、譲渡代金の値上を要求したので、夏井は、之に応じて現金を提供したが、道田は、之を受領せず、株券を引渡そうとしなかつた。その後右株券は、印刷のまま被告会社の書庫に保管されていたもので未だ発行されていないこと及び被告会社の発行済株式四、七〇〇株は、訴外高橋久喜代の所有であることが判明し、高橋から株式名義の訂正株券交付の請求があつたので、被告会社は、株主名簿及び株券を作成し、同年九月三〇日に株券を発行した。そして、夏井武は、同日高橋からその所有株式四、七〇〇株を譲受けた上、同年一〇月五日一部を自己に留保し、他に参加人等に分譲したのである。そして、道田及び原告河藤名義の株式については、同人等が、株券を受取らないので、被告会社に於いて保管していたが、同年一〇月二四日夏井武に於いて、前記譲渡契約に基く債権者代位権を行使して之を受取り、同年一一月一〇日同人の株券引渡債務の弁済に充て同日名義書換をしたのである。前述の如く昭和二八年六月五日の取締役、監査役選任総会決議及び同月一五日の商号の総会決議は何れも前記譲渡契約に基き為されたもの、同年一一月二日の確認の決議は、道田が、約旨に反して総会の代理委任状を提出しなかつたし、其の後株主の大異動があつたので、新株主による総会に役員の信任を問うたもの、又同日の解任並びに選任の総会決議は、夫々正当事由による解任とその補欠の為の選任決議であつて、商法所定の手続によつて招集されたものであり、何れも適法有効である。原告等は、被告会社設立当初からの株主であると主張するが被告会社は、高橋久喜代が、金二三五万円と道田幸太郎が、金一五万円を出資して設立したもので、原告等は、会社設立の際便宜上一時右訴外人等の持株の名義を使用されていたに過ぎない。即ち、原告河藤は、道田の持株の内一〇〇株、原告上島は、道田の選定によつて高橋の持株の内八〇株の名義人にされていたことがあるというだけで、固より其の株式につき何等の権利もなかつたのである。仮に、原告等が、其の名義の株式につき何等かの権利があつたとしても、其の権利の処分権を道田に一任し、道田は、前記譲渡契約によつて其の権利行使一切を譲受人たる夏井武に一任したのであるから、其の委任に基き為された前記総会決議は、固より適法であつて、原告等は、其の決議の効力を争い得べきものではない。加うるに、本訴は、原告等が、設立当初の虚無の株主権を主張し、之を前提として昭和二八年六月五日の役員選任決議を無効にし得るものと妄断し、その後代表取締役夏井武の招集した総会は、無資格者の招集に係るものとし、其の発行した株券も同様無効と速断し、之によつて、道田が所持し印刷したまま未発行の旧株券を夏井から不法に奪取した旧代表者印によつて形式を整え有効なものに仕上げようとするものであることは明白である。要するに、本訴は、参加人等の株主権を争い、道田が、被告会社の全株式を所有するとして、予め其の確認訴訟の際に備えることを目的とせるものであることは、一点疑の余地がない。其の目的からすれば、道田から直接株主権確認の訴を提起すべきで、原告等は、何等訴訟の利益も必要もない。原告等は、訴権がなく前記のとおり正当な当事者でもないから、本訴は不適法である。原告等は、本訴は、商法第二五二条の規定に基き、株主総会決議の無効宣言を求めるものであると主張するが、商法第二五二条の訴は、総会の決議の内容が、法令又は定款に違背することを理由とする場合に限り許されることは、同条の明定するところである。しかるに、本件総会の決議の内容は、取締役、監査役の選任、解任、商号変更に関するものであつて、決議の内容自体に於いて何等法令又は定款の規定に違背する点はないのであるから、本訴請求は此の点に於いても失当である。参加人夏井武、和田武春、夏井久雄、松木熊吉は、夫々前記の如く被告会社の代表取締役、取締役、監査役であり、且つ、株主である。その他の参加人等も、被告会社の株主である。本訴は、形成訴訟と認められるから、其の判決の効力は、取締役、監査役及び株主に及ぶのであるから、参加人等は、原告及び被告会社間の本件訴訟の結果によつて権利を害せられるから、民事訴訟法第七一条の規定によつて、参加申立に及んだ。」と陳述した。<立証省略>

三、理  由

先づ、参加人等の参加の適否につき判断するに、参加人等の参加申立の理由の要旨は、「参加人夏井武は、被告会社の代表取締役、参加人夏井久雄は、被告会社の取締役、参加人松木熊吉は、被告会社の監査役であり、且つ、夫々被告会社の株主であり、その他の参加人等は、何れも被告会社の株主であるところ、本件訴訟は、形成訴訟と認められるから、その判決の効力は、参加人等に及ぶのであるから、本件訴訟の結果によつて権利を害せられるから、民事訴訟法第七一条の規定によつて本訴に参加する。」と謂うに在る。そうすると、参加人等は、民事訴訟法第七一条前段の規定に依り、いわゆる当事者参加申立を為していることは明白である。そこで、民事訴訟法が、補助参加、共同訴訟参加の外に同法第七一条前段に於いて訴訟の結果に因つて権利を害せられるべきことを主張する第三者が当事者として参加することを得る制度を何故採用しているかを考察せねばならない。訴訟の判決の効力が、当事者双方と第三者との間に及ぶ場合、又は第三者が、判決の反射的効力を受けて之を承認しなければならない結果、不当に権利を侵害される場合があり得ることは、容易に観看取することができる。判決の効力が、当事者の一方と第三者との間に及ぶ場合は、民事訴訟法第七五条の規定による共同参加を為すべく、単に第三者が、訴訟の結果につき利害関係を有する場合には、同法第六四条の規定による補助参加によつて参加することができるが、補助参加の場合には、参加人の訴訟行為の効力に制限があり(同法第六九条)共同訴訟参加の場合には、その資格及び当事者の一方及び第三者に付き訴訟の目的が合一にのみ確定すべき場合に該当しなければならない。しかるに、前記のように判決の効力が、当事者双方と第三者との間に及ぶ場合又は第三者に判決の反射的効力が及ぶ結果、その第三者が不当に権利を侵害される場合には、その第三者をして、独立した当事者として該訴訟に参加を許し、不当に権利を侵害されることを防止せしめる必要がある。民事訴訟法第七一条前段に於いて当事者参加の制度を設けたのは、第三者をして右の如き場合に権利侵害から免れしめる為である。そこで、「同条前段の訴訟の結果に因り権利を侵害される」とは如何なる場合であるかを考察せねばならない。訴訟の当事者が、民事訴訟法の認める攻撃防禦の方法を尽した上判決により正当な権利関係が確定された場合は、たとえ、第三者はその判決の直接の効力、又はその反射的効力を受け、その結果として判決によつて確定された権利又は法律関係を甘受しなければならないことは真に已むを得ないところである。之に反して、当事者双方が、いわゆる馴合訴訟をし、その判決の効力が、第三者に及ぶ結果、第三者が権利を害される場合には、第三者としては之を甘受することができないところであつて、民事訴訟法第七一条前段が、第三者に当事者参加を認めた所以であり、同条前段にいわゆる「訴訟の結果に因り権利を害せられる第三者」とは、かかる場合の第三者を指称するものである。要するに、かかる馴合訴訟の場合にのみ第三者は、権利保護の利益を有し、同条前段の規定に依り、当事者として参加し得るのである。何となれば、正当に原告の主張を抗争し、防禦方法を尽している被告に対しては、第三者は、訴を提起する権利保護の利益を有しない。同条前段の当事者参加をする為には、第三者は、当事者双方に対し、権利保護の利益がある場合でなければならないからである。本件に於いて之を見るに原告等は、別紙目録記載の被告会社の株主総会の決議が無効であることの確認を求め、一方原告河藤敬三等は、当裁判所に対し、参加人夏井武、同夏井久雄、同和田武春、同松木熊吉を被申請人として職務執行停止、代行者選任の仮処分申請を為し、当裁判所が、右申請を許容して昭和二八年一一月一四日本案判決確定に至る迄右被申請人夏井武の被告会社の代表取締役である取締役の職務を、同夏井久雄、同和田武春の被告会社の取締役たる職務を同松木熊吉の被告会社の監査役たる職務を停止し、右職務停止期間中関豊馬を被告会社の代表取締役である取締役、大原篤、松浦孝一を被告会社の取締役、後藤陸朗を被告会社の監査役としての夫々職務を代行せしむる旨の仮処分決定を為し、その旨同月一六日登記されたこと、右関豊馬が、被告会社の代表取締役の職務代行者として被告会社を代表し、大原篤を訴訟代理人に選任して本訴に於いて応訴し、答弁書に於いて、原告の主張事実を争い、且つ、証人尋問の申出を為して居ることは、記録上明白であるのみならず、前記職務代行者等は、何れも大阪弁護士会所属の弁護士であることは、当裁判所に顕著な事実であるし、裁判所から選任された右職務代行者は、半ば公の機関として被告会社の機関として被告会社の為に職務を執行しているものであることは、職務の性質上当然である。従つて、その職務の執行は極めて公平妥当であると認めるを相当する。そうすると、本訴は、前記のような馴合訴訟であるとは到底認めることはできない。参加人等は、被告会社の取締役、監査役又は株主であると主張しているのであるから、本件訴訟の結果に付き利害関係を有することは明かであるから、宜しく民事訴訟法第六四条の規定に依り補助参加すれば足るべく、若し真に参加人等の主張するところが真実なりとすれば、公平なる立場に在る被告会社の職務代行者とその意見を同一にし、同一の主張と、同一の訴訟資料とを使用して、原告の主張を争うことを得べく、その所期の目的を達することを得るであろう。しかし、参加人等の本件参加は、補助参加でなく、民事訴訟法第七一条前段の当事者参加であり、前記の理由に依り許されないものであるから、不適法として之を却下することとする。

次に、本訴につき判断することとする。被告会社が、設立当初一般貸切旅客運送事業を目的とし、資本金二五〇万円一株の金額金五〇〇円発行済株式五、〇〇〇株昭和二六年七月三〇日設立登記を為された会社で、当初の商号を大阪陸運交通株式会社と称していたこと、被告会社の設立当初の重役は、代表取締役高橋久喜代、同道田幸太郎、取締役内海金蔵、同道田正吉、同中山善一郎、同河藤敬三(原告)、監査役石川正吉、同吉田広持であつたことは何れも当事者間に争いがない。成立に争いのない甲第一号証の一乃至二九、同第二号証の一乃至九五、証人三井実の証言に依り真正に成立したものと認め得る同第三号証の一乃至九七及び証人三井実、同道田幸太郎の各証言を綜合すると、原告両名及び訴外道田幸太郎外三三名は、被告会社の当初の株主であつて、原告河藤は、被告会社の一〇〇株の株主であり、原告上島は、同八〇株株主であり、現在もその旨被告会社の株主名簿に記載されていることを認めることができる。そして、昭和二八年六月一三日附で被告会社の前記重役が、原告主張のとおり登記簿上変更されていること、右登記事項である被告会社の重役の退任、重任及び就任が同月五日為された旨の登記の存すること、同月一五日被告会社の商号を錦城陸運株式会社と変更した旨の登記が同月一七日為されていること、同年一一月二日取締役道田幸太郎及び監査役三井実を解任し、同日取締役和田武春が就任した旨の登記が、同月六日附で為されていることは、何れも被告の認めるところである。成立に争いのない甲第一八号証(株主総会議事録)に依ると、被告会社代表取締役道田幸太郎は、昭和二八年六月五日午後三時被告会社の株主総会を被告会社の本店に招集し、株主総数三六名発行済株式総数五、〇〇〇株出席株主三六名(委任状共)持株数五、〇〇〇株、取締役道田幸太郎議長席につき議事に入る、議事、一、取締役二名、監査役二名選任の件、議長右の件につき議場に諮つた処全員一致を以つて左の通り選任し、被選任者は何れも即時就任を承諾した。取締役夏井武、同夏井久雄、監査役松木熊吉、同三井実。議長は右により本日の議案は全部終了した旨を告げ閉会した。時に午後四時一〇分であつた旨の株主総会議事録が作成されていることを認めることができる。しかし、成立に争いのない甲第七号証の一、二、証人道田幸太郎、同三井実、同夏井武、同森本正雄の各証言を綜合すると、昭和二八年六月五日当時道田幸太郎は、被告会社の代表取締役であつたが、右の六月五日の株主総会を招集する旨の取締役会の決議を為したことも、各株主に対し右株主総会を開催する旨の通知も為さず、夏井武と相談の上、右の如き株主総会が実際には被告会社に於いて開催された事実がないにも拘らず、開催され、前記の如き株主総会の決議があつたものの如くにして、弁護士森本正雄に依頼して、翌六日前掲甲第一八号証の株主総会議事録を作成し、之に基き、前記の取締役、監査役等が就任した旨の登記を為したことを認めることができる。右事実からすると、右株主総会の決議は、形式的に為された如くなされたものであつて、当然無効であることは明白である。そうすると、右株主総会の決議に依つては、夏井武、同夏井久雄は、何れも被告会社の取締役に就任することを得ず、松木熊吉、三井実は何れも被告会社の監査役に就任することを得ないものである。次に、成立に争のない甲第五号証の一、二、同第一九号証、証人道田幸太郎、同三井実、同夏井武、同森本正雄の各証言を綜合すると夏井武は、前記昭和二八年六月五日の株主総会の決議に因り被告会社の取締役に就任したものとし、取締役会の決議に因り被告会社の代表取締役となつたものとなし、同月八日取締役会の決議に因り同月一五日臨時株主総会を開催することを決定し、同月一五日真実株主総会を招集せざるに拘らず、之を招集したものとして被告会社の商号を錦城陸運株式会社と変更する旨の決議があつたものとし、弁護士森本正雄に依頼してその旨の臨時株主総会決議録を作成し、之に依つて、商号変更の登記を為したこと、又同年一〇月一三日午後三時被告会社の本社社長室に於いて、夏井武、夏井久雄及び道田幸太郎の三名は、被告会社の取締役なりとして(夏井両名は、前記の如く真実の取締役ではない)取締役会と称するものを開き、夏井武は、被告会社の代表取締役なりとして議長となり、定時総会を昭和二八年一一月三日乃至四日に大阪市西区本田一丁目六一番地鴻盛園に招集し、第一号議案として、前記昭和二八年六月五日開催の臨時株主総会の決議及び同月一五日開催の前記臨時株主総会の決議承認の件、第二号議案として、第二期決算書類承認の件を夫々会議の目的たる事項として株主総会を開催すること、臨時株主総会を右定時株主総会終了後引続き開催し、取締役監査役解任及び選任の件を会議の目的たる事項として上程することを何れも決議し、之に基き、夏井武は、被告会社の代表取締役なりとして、同年一〇月一七日附書面で、原告河藤敬三及び道田幸太郎に対し、右定時株主総会及び臨時株主総会を同年一一月二日午後五時大阪市西区本田一丁目六一番地鴻盛園に於いて、前記の会議の目的たる事項を議案とする旨の招集通知を発すると共に、訴外高橋久喜代から同年九月三〇日買受けたと称する被告会社の株式を自己に於いて分与したと称する株主等に対し、前同様の株主総会招集の通知を為し、同年一一月二日前記場所に於いて株主総会を開催し、右第一、二号議案を承認する旨及び別紙目録第三記載の如き解任及び選任の決議が為されたことを夫々認めることができる。そして、商法第二三一条の規定に依ると株主総会の招集は、本法に別段の定ある場合を除くの外取締役会之を決することとなつて居り、被告会社の定款(成立に争いのない甲第一七号証)第一八条第一項の規定に依ると、総会は、法令に別段の定めある場合を除き取締役会の決議を以つて、社長が之を招集することになつている。しかるに、右昭和二八年六月一五日の株主総会及び同年一一月二日開催の株主総会は、何れも適法に選任されて居らぬ夏井武及び夏井久雄が主となり、従来からの取締役道田幸太郎を加えた取締役会と称するものの決議に依つて招集を決せられ、夏井武が被告会社の代表取締役なりとして招集した(同年六月一五日の株主総会は、実際上招集されたことはなく、招集されたこととした)のであつて、右株主総会は、適法に招集されたものでないことは、前記認定事実に依つて明白である。そうすると、同年六月一五日及び同年一一月二日の被告会社の株主総会の決議は、何れも当然無効であると謂わなければならない。しかるに、前記三回に亘る株主総会の決議に基き、登記事項である各決議の目的たる事項が、登記されていることは、前記のとおりであるから、原告等が、その無効の確認を求める本件請求を正当として認容する。

仍つて、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岡野幸之助)

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